ネコのあなたと「私」 by 黒目月子 |
第111話 おかえり、ただいま |
春になり、ついにチビネコの避妊手術をすることにした。
まだ少し大人より小さいチビネコ。
病院に連れていく時、玄関を開けたとたん、激しく悲鳴のように鳴き出した。
道を歩いている人たちが振り返るほどに。
車道を走る車も、外に出た事も、どこに行くのか分からない事も怖いのだろう。
私はキャリーケースのチビネコにひっきりなしに話しかけながら、病院まで歩いて行った。
「こんなに菜の花が咲いているよー」
「風が気持ちいいねー」
「外のおひさまはポカポカじゃない?」
そして、病院に着き先生に会って看護師さんに、チビネコを預けた。
家に帰ると、チビネコのいない部屋。
いつもはしゃいで、遊びまくっているチビネコがいないだけで、部屋は静かで寂しい気がした。
不安そうに、オオネコが見上げてきた。
「チビネコは大丈夫だよ。明日帰ってくるからね」
説明すると、少しホッとした顔してノビを一つした。
翌日、迎えに行くと、元気なチビネコ。
キャリーケースを開けた途端に「帰るー!!!!」と、入ったのを、看護師さんと笑った。
帰り道、今度はチビネコは全然鳴かなかった。
私はやっぱり、チビネコにずっと話しかけていたけど。
部屋に入ると、オオネコが飛んできた。
嬉しくて仕方ないのだろう。声を出して喜んでいる。
そして、チビネコをペロッとなめて挨拶した。
「おかえり。ずーっと待ってたよ。」
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