ネコのあなたと「私」 by 黒目月子 |
第4話 沈丁花 |
隣の家からジンチョウゲの香りがし始めた。
今年も、ネコのあなたが1つ歳をとったと、思うのだ。
あなたの誕生日は分からない。
いつごろ産まれたのか全くヒントすら無いのだ。
だから、こんなジンチョウゲの香る頃、産まれたのでは?と、勝手に思ってみた。
甘い花の香りと一緒に産まれたなんて、ステキな気がしたのだ。
だが、また命の針が1つ進んだと思うと切なくなる。
あなたのやれる事が少しづつ減ってる気がするのだ。
感情表現はとても豊かなんだけど。
あと何回、こうしてジンチョウゲの香りを一緒に楽しめるだろう。
私はあなたを抱いてベランダに出た。
ジンチョウゲやその他の香りをお腹いっぱいに吸い込むあなた。
興味深そうに目を光らせている。
「いい香りがするの。分かる?」と、私に言っているようだ。
ジンチョウゲの香りが強く風に乗ってきた。
まるで、あなたが誕生してきた事全てを祝福してるようだ。
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